【獣医師インタビュー】エルムス動物医療センター #4 GW前に見ておきたい!動物とのおでかけについて/怪我の注意点

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エルムス動物医療センターは、病院での診療後に、より専門的な診察や治療を行う二次救急病院。病状を伝えられないペットたちにとって、早期発見・早期治療は重要なポイントです。
今後Perroleで様々な動物医療監修を行っていただくのは、東京都杉並区にある「エルムス動物医療センター 八幡山病院」のセンター長である高瀬先生。高瀬先生のご専門は整形外科です。
今回は、『動物とのおでかけについて/怪我の注意点』を中心に教えていただきました。

【#3 「移動」の注意点についての記事はこちら】


エルムス動物医療センター
高瀬雅行(たかせ・まさゆき)先生
生年月日:5月8日
出身:栃木
八幡山院 整形外科主任
所属学会:麻酔外科学会 / 獣医神経学学会
得意分野:整形外科 / 神経外科・内科 / リハビリテーション


お出かけを楽しい思い出にするために注意したい、怪我やトラブル

車で移動するときに、どういった怪我が起きやすいのでしょうか?

やはり、車の中で抱っこしていて落ちてしまう…というケースが多いです。膝に乗っていてすべり落ちてしまうなどですね。
骨折までいくケースはあまりないですが、ちょっとした急ブレーキで落ちてしまい、靭帯を痛めてしまうケースはあります。

特に小型犬が多く、気を付けてほしいと思いますね。後部座席にいたら前にぶつかってしまうこともあります。
やはり、チャイルドシートのようなイメージで、守られている環境をつくってあげてくださいね。


どうしても、車の中でも抱っこしたい人はいますよね。

動物は法的な規制まではないので、キャリーに入れていないと罰則がある訳ではありません。
なので、あまり一般的に広く知られている訳ではないという点が挙げられるでしょう。ただ、本当に事故に繋がりやすいので、注意してください。


移動前に食事をとったり、水を飲ませたりすることは問題ないのでしょうか?

食事は、車に乗る前に1~2時間程度あけた方が良いです。そのくらいあけていれば、きちんと消化や吸収がされていますよ。
食事が30分より前だと、未消化の状態なのでで吐きやすくなってしまいます。お水はたくさん飲んで、車に乗る直前に飲むのもそこまで悪くはありません。車の中で飲ませても良いですね。


ドッグランに行くと、犬は興奮して楽しそうですよね。遊ばせすぎるのも、疲れがたまるなど、良くない点はあるのでしょうか?

疲れがどのくらいたまるかどうかは、人間と同じで、犬の個体差によりますね。

小型犬、大型犬でも体のつくりが違いますから。運動量は、何分とは言わないですが、運動が終わってからその日の夜や次の日、体調が変わらないくらいの運動量がベストです。

足が悪い子は、術後の散歩ではじめと終わりにびっこを引いていないかどうかを見てあげてください。
歩き方がもたついていないか、もたついていたら痛すぎる状況ですよ。
運動中はわからなくても、帰ってきたらあきらかにびっこを引いている、次の日にびっこになる状態も、足の使いすぎですね。
それ未満になるように心がけるのが適切です。

ドッグランにいるときも、足があきらかにもたついてる、ふらついてる場合はやりすぎです。
呼吸の状態は、走って止まった時にハアハアした息が止まらないようであれば、やりすぎと言えるでしょう。


車からおりてすぐに走るわんちゃんがいると思います。これは危ないのでしょうか?

酔い止め薬の処方を出す数としては、小型犬の方が多い印象があります。なので、大型犬の方が車酔いに強い印象がありますね。


外出先での怪我について、気を付けたいこと

ドッグランでの、犬同士のトラブル。犬同士相性がよくない場合は、どう対処したら良いでしょうか?

犬同士のトラブルがありそうな場合は、犬と犬を離すしかないですね。
無理にうまくやろうとしても、噛まれての事故はおおいにあります。

犬同士での死亡事故や骨折も、事例としてあります。犬同士でも、この犬は合わない‥といったことはあるんです。
ドッグランは、飼い主がそばにいて、制御することが大切です。犬同士の社会化はあって、どうしてもあわない子もいますので、その場合は離してあげてください。

今まで外に出ていなかった子が急に外に出て、パニックになってしまうこともあります。

実は、ドッグランに慣れるのは結構大変なことです。犬を自由にさせるよりもまずは、そこで事故がないことが最低限。ドッグランの中でもリード付けるなど、徐々に慣らしてあげてください。


外出先で怪我をした可能性がある場合、どうしたら良いのでしょうか。

外出先で足を引きずっていたら、怪我の可能性が高いです。

怪我をする場合は、脱臼や骨折などがありえます。完全に足の方向がおかしい、ということで気付くことがあります。

足をあげっぱなしだったりするときも、すぐに病院へ。少し引きずる、足をかばっているようであれば、緊急処置である必要はあまりないと思うので、そういったときはかかりつけの病院に行ってください。

骨折や脱臼の可能性もあります。骨折の場合は、骨がずれてしまたり飛び出してしまう場合などもありますので、手術にならない場合でも、包帯などを巻いてもらう必要があります。

足が上がってしまって完全に地面につかない場合は、緊急性が高いです。それ以上歩かせたり、遊ばせるのは避けて、早めに近くの病院で診てもらう必要があるでしょう。


犬によって、起きやすい怪我はありますか?

脱臼しやすい、しにくいも個体差によって違います。脱臼のときは、股関節が問題だったりしますね。
特にトイプードルは、どこの脱臼も多い傾向があります。股関節、膝、肩など。トイプードルが7~8割で来院される印象です。脊椎のゆるみ症も、トイプードルが多いです。

事故だけでなく、普通の日常生活でもあり得ます。足の角度が普通の犬種に比べて立っているからでしょうか…医学的に証明されている訳ではないのですが、統計的にトイプードルが多いですね。チワワ、マルチーズもひざの膝蓋骨脱臼があります。


大型犬と小型犬、怪我の特徴はどのようなものでしょうか?

小型犬では前足の骨折や膝蓋骨脱臼というお皿の脱臼が多いと思います。大型犬であれば、圧倒的にひざの靭帯の損傷が多い印象です。


その他、おでかけで気を付けた方が良いと思うこと、注意してほしいことを獣医師目線で教えてください。

マナーを守っていただければ、特段問題ないです。犬の旅先でのトイレについても、配慮してくださいね。

また、お店の外にリードをひっかけて目を離すのも、あまり良くありません。

ただやはり一番危ないのは、車の中での抱っこです。きちんとキャリーに入れて移動するようにしてください。
お出かけする中で、「ここが自分のスペース」というところを作ってあげると良いですね。
広いところよりも、安全な狭いところを確保してあげるのがベストです。人間は長時間座っているとエコノミークラス症候群になりますが、犬はよほど狭くなければエコノミークラス症候群にはならないので、安心してください。

お出かけは、わんちゃんとしてはまわりの環境変化が楽しく、ひとつのイベントになります。新しい環境で、匂いを嗅いだりすることは好きですし、同じルートで同じところでずっと旅行しているだけでなく、どこかに行ってあげるのはぜひお勧めしたいです。


安全に配慮しながら、愛犬と楽しいお出かけを

今回はお出かけ先での怪我や、犬同士のトラブルなど、気を付けたいこととその対処法を教えていただきました。

お出かけで新しい環境に行くのは、犬にとってもわくわくして楽しめること。安全にはしっかり配慮して、愛犬を色々なところに連れて行ってあげたいですね。

【#3 「移動」の注意点についての記事はこちら】



【獣医師インタビュー】エルムス動物医療センター 取材記事バックナンバー

#1「動物の生活をつくる」という、まっすぐな想い

#2 動物病院との付き合い方/注意したい犬の病気は?


高瀬雅行先生 ご経歴
DVM CCRT
出身:栃木県
2010年 麻布大学卒業
2010年〜2014年 川瀬獣医科病院
2014年 CCRT取得(米国の犬リハビリ認定医)
2014年〜エルムス動物医療センター
2014年〜日本大学付属動物病院整形外科研修医
2017年〜エルムス動物医療センター
    センター長/整形外科主任
2019年〜 AMUSE動物運動器外科サービス
2022年〜 株式会社BJvet 代表