【獣医師インタビュー】エルムス動物医療センター #2 動物病院との付き合い方/注意したい犬の病気は?

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エルムス動物医療センターは、病院での診療後に、より専門的な診察や治療を行う二次救急病院。

病状を伝えられないペットたちにとって、早期発見・早期治療は重要なポイントです。

今後Perroleで様々な動物医療監修を行っていただくのは、東京都杉並区にある「エルムス動物医療センター 八幡山病院」のセンター長である高瀬先生。高瀬先生のご専門は整形外科です。

今回は、『飼い主が意識したい動物病院との付き合い方』や、『注意したい犬の病気について』を中心に教えていただきました。


エルムス動物医療センター
高瀬雅行(たかせ・まさゆき)先生
生年月日:5月8日
出身:栃木
八幡山院 整形外科主任
所属学会:麻酔外科学会 / 獣医神経学学会
得意分野:整形外科 / 神経外科・内科 / リハビリテーション


動物病院同士のネットワークが増えてきている

犬が犬らしい生活を送るという面で、病院選びは重要となってくると思います。
先生が考える獣医・動物病院と飼い主において理想としている付き合い方を教えてください。

昔に比べて、獣医も年々専門性に対する意識が高まり、動物病院も専門病院が多くなっています。

理想はやはり普段から同じ獣医に診てもらえるかかりつけ医があることですね。発症後に専門病院に行くより、定期的にかかりつけ病院に通院して、悪くなる前に治療することが一番です。ワンちゃんとの相性もありますし、普段の体調管理などは、かかりつけ医で診てもらう事が大事です。

病院の選択肢が増えた分、飼い主様が調べて病院を選ぶのが大切です。最近の一般動物病院は、自分のところで治療できない場合は抱え込まずに、紹介して繋ごうという傾向ですね。

自分だけで抱え込まない・ワンちゃんにとって最適な治療を、と考えているように見えますね。かかりつけ医と専門治療が出来る病院が提携して診察・治療できるのが一番だと思います。

もちろん、整形外科分野であれば飼い主様が調べて直接当院に来院いただいても、きちんと対応させていただきます。

専門病院への紹介が増えているというのは、飼い主にとっては嬉しいことです。課題もありますか?

もちろん課題はあります。専門病院への紹介は、かかりつけ医が持っている動物病院ネットワークに依存してしまいます。

また、東京都・神奈川・さいたま・千葉・大阪などの都市部は多いのですが、地域によっては、周辺に専門動物病院が少なくて紹介できない場合が多いことです。

紹介ネットワークが無いと、かかりつけ動物病院の獣医スキルに依存するしかありません。地方の開業医はみなさん実感されていて、若い世代が地方で開業する大きな壁となり、難しい問題です。

先生自身は、この地方の紹介ネットワークの課題はどのように取り組んでいらっしゃいますか?

普段は都内のエルムス動物医療センターに勤務していますが、休診日には東北や四国などで診療をしています。

一人の力ではなかなか解決できませんが、少しでも地方の動物医療に貢献したいと考えています。

今先生が診療しているワンちゃんの中で、一番多い怪我や疾患はなんでしょうか?

膝のじん帯損傷、具体的には前十字靭帯損傷です。これは、骨折などと異なり、加齢により靭帯が徐々に痛んでくることが原因と言われています。年を取っていきなり歩けなくなったり、片足がつけない場合は靭帯の損傷の可能性があります。

後ろ足を、散歩の後半になるとあげる座り方で足を片方だけ延ばすときも、じん帯が切れていたり、延びていることが多いです。この疾患は、肥満が原因の一つとも言われており、実際の患者は肥満の子が多いと感じています。


どんなワンちゃんも、肥満には注意を

犬種や年齢にもよりますが…、日常生活で飼い主が気を付けるべき点は何でしょうか。

整形外科・神経外科疾患の中で一番大切な事の一つは、「太らせないこと」です。

先ほどの靭帯疾患もそうですが、太っていると身体への負担になりますから、怪我のリスクも高くなります。

元気な時はいいけど、病気や怪我のリハビリや回復時に治りにくくなるのでワンちゃんが困ってしまいますよ。

また、ワンちゃんにとって生活環境的に階段上り下りはするメリットはありませんね。特に日本の階段は急だし、大きな事故やケガにつながることが多いです。

硬い床材やソファーやベッドへの上り下り含め、家庭内ではなるべくフラットな環境を作ってあげてください。

最後に、先生はやっぱり動物では犬が一番お好きですか?

実はウサギが一番好きです。ウサギは可愛いですからね(笑)

学生時代から5年前まで飼っていたけど、今は犬と猫がいます。ヨークシャテリアの“きのこ”(女の子)と猫の“おもち”を飼っています。

名付けが食べ物で可愛いですね

たまたまです(笑)そして実家ではボーダーコリーを飼っていて、犬では一番大好きです。

ただ、都内だとなかなか難しいので、いつか広いところでボーダーコリーと一緒に暮らすのが夢です。


かかりつけ医と専門治療ができる病院。飼い主が選択肢をもっておくことが大切

普段から診てもらえるかかりつけ医があること、そしてかかりつけ医以外の選択肢も考えておくこと。

人の病院選びと同じように、犬にも選択肢をもって、愛犬の状況にあわせて飼い主が選んでいくことが大切だと感じました。

また、肥満は病気のもとだけでなく、怪我のリスクにも繋がるので、気を付けていきたいところですね。

次回は、『動物とのおでかけについて』を中心に取材していきます。


高瀬雅行先生  ご経歴
DVM CCRT
出身:栃木県
2010年 麻布大学卒業
2010年〜2014年 川瀬獣医科病院
2014年 CCRT取得(米国の犬リハビリ認定医)
2014年〜エルムス動物医療センター
2014年〜日本大学付属動物病院整形外科研修医
2017年〜エルムス動物医療センター
    センター長/整形外科主任
2019年〜 AMUSE動物運動器外科サービス
2022年〜 株式会社BJvet 代表