【獣医師インタビュー】エルムス動物医療センター #1「動物の生活をつくる」という、まっすぐな想い
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エルムス動物医療センターは、病院での診療後に、より専門的な診察や治療を行う二次救急病院。病状を伝えられないペットたちにとって、早期発見・早期治療は重要なポイントです。
今後Perroleで様々な動物医療監修を行っていただくのは、東京都杉並区にある「エルムス動物医療センター 八幡山病院」のセンター長である高瀬先生。高瀬先生のご専門は整形外科です。
先生の獣医としての想い、そして外科と整形外科の違う点という基本的なところから教えていただきました。
エルムス動物医療センター
高瀬雅行(たかせ・まさゆき)先生
生年月日:5月8日
出身:栃木
八幡山院 整形外科主任
所属学会:麻酔外科学会 / 獣医神経学学会
得意分野:整形外科 / 神経外科・内科 / リハビリテーション
「犬のQOLを上げる」という贅沢な分野に携わりたかった
外科と整形外科の違いを教えてください。
整形外科は外科の一分野で、腹部外科や軟部外科、脳神経外科と同じように分類されます。
簡単に言うと骨や関節の治療に関する専門ですね。骨折や脱臼など関節や骨、筋肉の治療などを行っています。
他の分野に比べても特殊な分野なので、整形外科医はきちんとした経験や知識が必要です。
先生はなぜ特殊な整形外科を専門にされたのですか?
学生時代から外科を目指していたわけではないのですが、外科の授業を受けて「手術で治す!素晴らしい!これが獣医だ!」と思ったのがきっかけです。整形外科は命に係わるとは思ってなかったし、学術的にはぴんと来ていませんでした。
ただ、今でも尊敬する憧れの先生に出会ったことで整形外科を志しました。
その先生は、整形外科の分野や理論・技術的な話を楽しそうに話されていて、「ルールがあり、ルールを守って技術を使って動物を治す整形外科」がとても魅力的に感じたことがきっかけです。
治療をする際に、学術的な内容を調べ、「これだ、これだ!治せる!治せた!」という経験も嬉しかったですね。歩けなかった犬が嬉しそうに歩いているんです。
命にかかわり“獣医の花形”である腫瘍や癌を治す以上に、「犬のQOLを上げる」というとても贅沢な分野に携わりたいと思いました。
獣医になることは子どもの頃からの夢だったのでしょうか?
獣医になりたいと思った強く大きなきっかけはないんです。実家が畜産系の牧場で、動物は身近な存在でした。
ただ、産業動物は当たり前ではあるのですが殺される運命で、それが可哀想と思っていました。
子どもの頃から動物…と言ってもほとんど牛ですが(笑)、と触れ合っていた中で、産業動物には向かないなと。
育った環境も大きいですが、犬も飼っていましたし、動物達との生活を守っていきたいなと思って獣医師を目指しました。実家は獣医なら畜産系を専門にしてほしいと思っていたでしょうね。
ワンちゃんと飼い主が楽しい時間を、どれくらい長く作れるか
獣医、整形外科医として大切にしている考えはありますか?極端なことを言うと、とにかく延命重視する先生もいらっしゃいます。
最も重要視している点は、ワンちゃんにとって「元気・歩ける・動ける・痛くない・楽しく」生きられることです。
歩けなかったことが歩けるようになるととても嬉しそうにしてくれます。それがわんちゃんにとっても生きがいなのだと思っています。
歩けなかったワンちゃんが治療後に必死で歩く姿が可愛くて、その姿を見た家族である飼い主様も治療して良かったと喜んでいる姿すら可愛く感じますし、整形外科医としての喜びです。
辛くなく痛くなく歩ける、犬らしい生活を飼い主と楽しくどれくらい長い時間を作れるか…それが獣医として一番大切にしている想いです。
小さな頃から動物に触れあってきた経験が今に活かされていると感じることはありますか?
はい。牛の骨折や怪我などの治療に関わったことで感じたことがありましたね。
酪農なので乳が出るためちょっと頑張って治そうとするのですが、「この子の為に直したい」よりは、産業的に治す面が大きいんです。逆に「産業的にお金をかけて治すにはならない」と判断される場合もあります。
その時の経験から、整形外科医として助けられる子を増やせる、一つでも多く治していきたいと想う今があるんだなぁと思っています。
人と犬が喜んでいる姿が、獣医師としての喜び
幼いころから動物と触れ合っていて、様々な面で「人と動物」の生活を感じてきた高瀬先生。
動物のQOLを上げる分野を贅沢と感じ、人と犬の喜びを獣医としてのやりがいという点、とてもまっすぐな想いを感じました。
次回は、『動物病院と飼い主の付き合い方』や、『注意したい犬の病気』について取材していきます。
高瀬雅行先生 ご経歴
DVM CCRT
出身:栃木県
2010年 麻布大学卒業
2010年〜2014年 川瀬獣医科病院
2014年 CCRT取得(米国の犬リハビリ認定医)
2014年〜エルムス動物医療センター
2014年〜日本大学付属動物病院整形外科研修医
2017年〜エルムス動物医療センター
センター長/整形外科主任
2019年〜 AMUSE動物運動器外科サービス
2022年〜 株式会社BJvet 代表