【獣医師インタビュー 】加藤動物病院#2 犬の家族化と病気について/犬の繁殖について

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三鷹市で約40年近く犬や猫の医療に携わってきた、加藤動物病院の加藤敦子先生。

抗がん治療から日々の健康のお悩み相談まで、様々な症例に対して向き合ってきました。

そんな加藤先生に、獣医師の目線での「犬と人の関わり方」について、Perrole編集部が取材していきます。

今回は、『犬の家族化と病気について/犬の繁殖について』をテーマにお伺いしました。


加藤動物病院
加藤敦子(かとう・あつこ)先生


癒しや元気を、犬は人に与えてくれる

「犬の家族化」が進む今、人が動物と暮らすことについてどう思いますか?

子供がいないから動物飼うという方もいるし、子供たちが独立して夫婦二人になって、時間にも余裕があるから動物飼いたいな、という人も増えていると思います。

若い飼い主さんもですけど、最近思うのは、高齢の方への「犬の力」が大きいということです。とても生活が潤うと思います。ご飯あげなきゃ、散歩いかなきゃ、で「元気でいよう!」と意欲が出ますよね。一緒に居て癒されるっていうことは動物の役割の一つでもあります。

でも自身が高齢になるとやはり動物を飼い続けるのが難しくなることがあります。
まだ少ないですが、犬が一緒に同居して入居できる高齢者ホームがあります。施設に動物病院も入っているところもあるようです。

高齢者と犬が一緒に安心して入居できる施設はとっても良いなと思いますね。子犬や子猫よりも、長年連れ添っていれば一緒にいたいと思うのは当然のことでしょうから。もし飼い主さんが先に旅立たれても、残された犬を最期まで面倒見ます、という施設が出来ると良いな、と思います。

動物の癒しの効果は、絶大ですよね。

動物と触れ合う、撫でたり抱いたり甘えられたりされる時、すごく幸せで癒されますよね。

吠えられる、何やっても怒るようなときには「どうして?」と悲しくなるかもしれないけど…。

美味しそうに嬉しそうに食べたり、気持ちよさそうにしていたり、じっとこちらを見ていたりする姿や、意思の疎通が叶ったときはとても嬉しくなりますよね。

毎日の世話は大変ですが、癒し癒され、という関係が生じていると思います。少し気が重い日でも犬と暮らすと、「朝起きてごはんあげなきゃ」とか、「ちょっと散歩連れて出るだけでも歩こう」とか思い、背中を押されますよね。


人が犬を必要とする背景に、悲しい現実もある

獣医の仕事をする中で、犬の病気についてどのようにお考えですか?

特に原因が無く生じる病気もあれば、年齢を重ねることで出る病気もあります。時には事故やケガもあります。

一方で、日常生活で気を付けていれば避けられる事もあります。そして人気が出たことで、急に特定の種類だけ産ませる数を増やしたり、珍しい色や形を求め、無理な繁殖をしたころにより、若いうちから重い病気を抱える動物も少ないくないと感じます。

販売されてる犬たちは、人が作り出している命です。犬も飼い主も獣医療も大きな負担を抱え込むような繁殖は、避けられるべき、と思います。

繁殖犬についても、その環境が劣悪だという問題がありますよね。

そうですね。もと繁殖犬で、狭いゲージでたくさんの犬が雑多に飼われているような環境にいた犬が、人に引き取られて来院しました。

診察中、何をしても殆ど反応せず、表情も変えませんでした。とてもいい子にみられましたが、撫でてても嬉しそうになりません。

良い家庭に飼われ、1年ほど経った頃来院すると、表情明るく嬉しそうに尻尾を振る姿がありました。さらに月日が経つと、嫌なことは嫌です。とちゃんと感情を表すようになっていました。

産むことだけを要求され、本来の自分を忘れているかのような犬たちがいることに、衝撃を受けました。人が犬との暮らしを求める中で、こんなことはあってはいけないと思っています。


本当の「犬の家族化」が叶う世界へ

人と犬の共存。人は犬のお世話をし、愛することで癒しや元気を貰っているのです。

犬の病気も実は先天性のあるものも多いということや、繁殖犬について実際のエピソードを交えて教えていただきました。

現実を知り、それに対して私たちが考え行動を起こすことが、少しずつでも本当に「犬の家族化」が当たり前の世界に繋がっていくのではないかと思います。

加藤先生、貴重なお話をありがとうございました!


加藤動物病院
住所:東京都三鷹市中原3-1-57
電話:0422‐48‐8364
診察動物:犬、猫
(※現在新患は受け入れていません)