【獣医師インタビュー】加藤動物病院#1 愛犬の病気。飼い主はどんな選択をすればいい?

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三鷹市で約40年近く犬や猫の医療に携わってきた、加藤動物病院の加藤敦子先生。

抗がん治療から日々の健康のお悩み相談まで、様々な症例に対して向き合ってきました。

そんな加藤先生に、獣医師の目線での「犬と人の関わり方」について、Perrole編集部が取材していきます。

今回は、『犬の家族化と病気について』をテーマにお伺いします。


加藤動物病院
加藤敦子(かとう・あつこ)先生


高度医療を受けるか、自然体で治療をするかの選択

加藤動物病院には、どのような患者さまがいらっしゃるのでしょうか。

うちでは難しい検査や治療ができないこともあり、「(いろいろな意味で)無理のない」「なるべく自然体で」「動物が辛くなければいい」というケアを望まれる飼い主が方が多いです。

動物との暮らし方や考え方が色々あるなかで、現在、動物病院は数も形態も多くなり、思いに合うところを選び、行くことが出来るようになっていると思います。

癌等を含む難病、重症、超高齢等の動物に対し、より踏み込んだ検査(血液、超音波、CT、MRI等)や高度先進医療(抗がん剤、放射線治療、手術、再生医療等)を希望する方には設備の整った病院をご紹介しています。

加藤動物病院には、「自然体で治療をしていきたい」という考えの飼い主様が多いのですね。
飼い主様とのやり取りの中で、意識していることはありますか?

犬が病気になった時、治療や介護方法などについて、みなさんすごく悩まれます。これから何をしてあげたらいいのか・・・。

どうしても動物のために割くお金も時間も絡んできますし、治療に対する動物の受け入れ難さもあります。

「様々な理由で出来るかもしれない治療をやってあげられない」という呵責を感じている方もいます。

うちの病院に来てくださった方で、「どうしたいいんでしょう?」と言われたときの答えとしては「今までずっと近くにいて一番よくその犬の事を理解してあげられるお家の方が、一生懸命その子のことを考えて出したやり方であれば、それが正解だと思っています」というお答えをします。

例えばお家によっては「痛みがなどがなかったら、もう何もしなくてこのまま看取ります」という方もいらっしゃれば、「出来ることは全てやってあげたいです」という方もいらっしゃいます。

いずれの正解で、どれも間違いではないと思います。見送った後に「あの時こうしていればよかったかな」というような”後悔の念”が全然ない方はほとんどいません。

でも、辛い告知を受けてからも毎日その子に寄り添い、悩みながらも手をかけてあげて、そして旅だったのなら、その子(愛犬)は十分幸せだったと思います。それでも、皆さんの心の中で石を抱えながら‥というのはどうしてもありますね。

愛犬が病気になったとき、”親がどう考えるか”が大切

犬も長生きの世の中になってきている中で、治療については「できる限り何でもしたい」という方が多いですか?

そういう方は増えていると思いますね。ただ、うちの病院のような病院にいらっしゃる方は、「本人(愛犬)が辛くないのなら、自然体の治療で良いです」という方が残られます。

残念なことに、例えば癌性のものにかかると、(腫瘍をしっかり切除出来れば大丈夫というようなパターンは別として)、完治することは難しくなっています。助けることは難しくなってきます。

一緒に暮らせる期限が出てくるので、その中でどのように、愛犬とのQOL(クオリティー・オブ・ライフ)を考えていくか、動物たちは、頭で考えて”体にいいから”という考えは持っていませんので、「嫌なものはいや!」ですよね。

嫌なことを毎日一生懸命お家でされると、病気になって体が辛いうえに大好きな人に色々される‥‥、犬にとっての憩いの場がなくなってしまうと思えます。

病院に来たときは注射や嫌な処置を頑張って貰っても、お家に帰ったら無理はしないでいいですとお伝えしています。満たされて、穏やかな表情を見せてくれるなら、好きなこと、食べ物、なんでも‥‥とお話ししています。

どんな治療をするのかは、犬が喋れないからこそ、飼い主や獣医それぞれの考えにもよってきてしまいますね。

例えば、食べられなくなった時、動物にも、鼻や食道、胃へのチューブを通して栄養を入れる方法もあります。

効果が大きいと思われれば獣医師は進めます。ただそれが大変で長期に渡ると予測させる時でも、希望される飼い主の方もいますし、処置を望まず口から食べられるものだけで良いです、という方もいます。

それは人間も同じだと思いますが、本人(動物)に選択肢が無いという点では、違うところですよね。

治療に関しては、不安や疑問が無いように、獣医師と充分に話し合われる事をお勧めします。

場合によっては、セカンドオピニオンとして他の病院でお話を伺うのも構わないと思います。治療法は違っても、良くしてあげたい、との思いは同じです。飼い主の方が納得し、ご自身の動物に合う治療法を選んでほしいです。


治療の選択肢は、人間も犬も同じ

大切な犬が病気になったとき、様々な選択肢はありますが、親である私たちが「愛犬のために何ができるか」を考えることが何よりも大切だと感じました。

愛犬とは言葉を交わせないからこそ、親である私たちがきちんと情報収集をしつつ、”自分の愛犬に合った方法”で健康になり、幸せに暮らしていきたいですね。

次回は、『犬の家族化と病気について』『犬の繁殖について』をテーマにお伺いしていきたいと思います。


加藤動物病院
住所:東京都三鷹市中原3-1-57
電話:0422‐48‐8364
診察動物:犬、猫
(※現在新患は受け入れていません)